あらすじ
山と湖に囲まれた村で生まれたペーターは、自然を愛する少年だった。功名心がないわけではないので、都会にあこがれていた。両親から賛成を得られなかったが許可をもらい都会の学校へ行った。
恋や親しい人の死、都会の人間の矮小さに触れながら、自分の使命は自然を愛する詩を、世界へ伝えることと気づいた。まず初めに取り掛かったのは、人間を愛することだった。人間嫌いの彼は、人づきあいがうまくできなかった。試行錯誤の結果、庶民と友人関係を結ぶととても心地良いものだった。無理に見栄や嘘をつかれないからだ。そして、身障者と仲良くなり、次第に人間の美しさに気づいていくのだ。
彼は壮大な小説のために旅に出ようとして、そのついでに郷里に帰った。南風が強い季節だったので、年老いていた父親の世話をして、春になったら旅に出ようと考えるが、日々の生活に追われていった。そして、あの自然を愛する壮大な小説は机の引き出しの中で今も眠っている。
夢や目標、『ねばならない』ことが、自然体より決して高尚というわけではない。
著者はそれを否定的にも肯定的にも描いていない。自然体であることに賛否を付ければ、それは自然体でなくなってしまうからだろう。