2017年4月14日金曜日

「何になっても、人間らしい、正直な暮らしをするつもりです」杜子春 芥川龍之介

あらすじ  
 親の遺産を使い切った杜子春は助けてくれる友人もおらず、門の前で困っていた。爺さんに「この夕日の中に発って、お前の影が地に映ったら、その頭に当る所を夜中に掘って見るが好い。きっと車に一ぱいの黄金が埋まっているはずだから」と言われた。
 大金持ちになった杜子春は、酒池肉林のパーティー三昧で数年で空になった。誰もが、自分から離れて言った。再び爺さんに会い、「今度は胸に当たる所を、夜中に掘ってみるが好い」といわれて、大金持ちになったが、3年ですっかりなくなった。
 再び爺さんに会い、「今度は腹に当る所を、夜中に掘ってみるが好い」と言われたが、彼は「金は要らない、人間の、金持ちには追従するが、貧乏になると逃げていく。そんな薄情さに愛想が尽きた、仙人にしてください」と頼んだ。
 杜子春は峨媚山の岩山に連れて行かれて、仙人が帰ってくるまで何も話すなと命令された。杜子春はいろいろな魔性に脅されたが、一言も発しなかった。死んだ父母を閻魔大王が呼び寄せて、目の前で痛ても彼は何も発しませんでした。すると、耳元で「私たちがどうなっても、お前さえ幸せになれるのなら、それより結構なことはないのだからね。」母の声が聞こえて、その世間の人たちとは違い、自分の身も考えず、息子のことを思う事に涙を流して、思わず「お母さん」と言ってしまった。すると元の門に佇んでいるのに気づいた。
 杜子春は仙人になれなかったが、なぜかうれしかった。仙人は「お前が黙っていたら命を絶ってしまうつもりだった」と述べた。杜子春は人間らしい、正直な暮らしをしようと決めた。

 生きていることに愛を感じれば、お金に囚われることなく、人間らしい生活を享受できる。

 お金を人生の中心にしても、満足な生活ができない。

 杜子春は愛に満たされていなかった。それを埋めめるために豪遊したが、結局傷ついただけだった。彼はもっと金があれば、傷つけられないと思っていたので、2度も同じことをした。金の量を増やしたところで変わらなかった。だからと言って、貧乏な暮らしを受け入れることもできなかった。このお金を生活の中心に考えても満足な生活はできなかった。

 人は誰でも愛されていて、その記憶は心にある。

 あらゆる拷問に耐えていたが、母からの一言で彼はついに声を漏らしてしまった。これは母の愛が言葉に現れた瞬間であるが、目の前にいたのは、母の顔をした痩せ馬である。この一言は生前の母が言いそうな言葉でなければ、彼の心を打つことはできなかっただろう。母の愛は常に彼の中にあったのだが、目の前の快楽に酔っているうちに忘れていたのだ。仙人は彼がそれを欲しがっているから、思い出させたのだ。
 お金は愛の代わりにならない。愛を思い出すことで、お金中心の考えを拭いさる事ができ、本当に人間らしい生活で満足できる心になった。

○仙人は常に杜子春の求めていることをしていた。彼の命を絶とうとしていたのも、彼が願っていたからだろう。

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