2018年2月12日月曜日

「どうも鬼というものの執念の深いのには困ったものだ。」 桃太郎 芥川龍之介


あらすじ
天に建つ桃の木から、子を孕んだ実が人間界に落ちていった。その子は気性が荒く、彼が鬼退治を思いつくや否や、身内は彼を追い出すような形で鬼を退治に向かわせた。その際に彼は身内に黍団子を作らせた。
 道中、その匂いに惹かれた犬、サル、雉に半分だけ黍団子をやって、伴わせた。彼らの仲は悪く、けんかをするが、桃太郎が検閲する。それくらいには桃太郎は技量があった。
 鬼は元来、平和を愛する種族で、平穏無事に暮らしていた。人間界に伝わる鬼は、悪い奴だけなので、鬼が悪のイメージが付いていた。
 桃太郎が鬼ヶ島へついて、蹂躙した。彼は女も子供も無差別になぶり殺した。鬼はすぐに降参して、なぜ桃太郎が鬼征伐に来たのかと彼に尋ねると、桃太郎は「鬼退治を思い立ったら、犬、サル、雉がお供してきたからだ。」と述べるだけだった。鬼は彼に従順で財宝や子を彼に渡した。
 鬼退治をしたが、桃太郎はそれ以後平穏無事な生活を送れなかった。鬼からの恨みをかい、若い鬼たちは人を殺すことに喜びを感じた。桃太郎は何度も殺されそうになり、それを殺さずにやったのに、鬼が執念深いといって呆れた。
 桃太郎のような天才が天の桃の木にいくつも実って、その中で眠っている。

天才は人を魅了し、他人の気持ちがわからないため世界を蹂躙し、天災にもなりうる。
 桃太郎は天からの子である。彼は自由に生きた。そして、黍団子や巧みな話術で家来を虜にした。天才である彼にはそういった魅力があるのだ。しかし、相手を慮る気持ちがないため、悲惨なことさえできる。鬼に芽生えさせた人を殺す喜びは、世界を悲劇に向かわすだろう。このような天才は、天災ともいえるのだ。
  確固とした理由もなく酒呑童子を倒した頼朝も、その天才の一人ともいえるだろう。そして、次の天才もまた天から落ちてくるのだ。

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