あらすじ
京都は飢饉だった。下人も腹を透かして盗人になるかと思案するほどだった。そして、羅生門の上の楼で一晩をしのごうと覗きに行くと、そこにはガリガリの老婆が死人の髪を毟っていた。下人はすぐさま老婆を追い詰めた。すると老婆はこの女も生きていくために嘘をついて商売していたのだ。私も生きていくために髪を毟っているので、女も許してくれると言った。
下人は覚悟を決めて老婆の着物を剥いだ。生きていくためにやるのだ許してくれるだろうと言って、暗闇に走り出した。
卑しさに飲まれるのも仕方ないが、それ相応の罰を得る。
下人は頬のニキビを度々気にしている。これは外面を気にしていることから、気高さを捨てられないでいたことが読み取れる。盗人になるしか生きる選択肢がないにも関わらず、実行に移す勇気が出なかったのもその理由である。まだ理由も知らないうちから老婆が死体の髪をむしっているのに嫌悪感を抱いていたのも同じである。
老婆の命は下人の手に握られていた。そして、着物を剥がされてしまった。人の命を握られるのは神くらいである。このような書き方は、神が卑しい人間の行いに下している罰といえる。
老婆の言い訳を聞いて、下人は気高さがなくなった。着物を剥ぐとき、自分が餓死することなど考えになかった。ただ、淡々と自分が盗人になれる理由を見つけただけだった。
そして、盗んだ後は黒洞々たる夜に消えていき、誰も行方を知らない。つまり、つかえていた家に戻らなくなったと表していて、おそらく死んだか盗人になったのかどちらかである。下人の気高さは言い訳を与えるとすぐに消えてしまったのだ。そして彼も幸せな生き方をできなかったのだ。
人は気品や気高さを持てばとても美しいが、簡単に卑しくもなれる。そして、卑しくなればそれ相応の生き方しかできない。
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