あらすじ
彼は病気を深い渓の間の宿で療養していた。その部屋には数匹の蠅がいる。冬なので夏のような不逞ははい。部屋の窓を開けると、彼らと一緒に日光浴にいそしんだ。しかし、彼は日光を憎く思ってもいた。それは日光が彼を、体力がないのに張り切らせるからだ。
彼は郵便局から帰ろうとしたが、バスに乗って遠くまで行き、二三日フラフラしていた。暗い森の中で彼は身体が生きようとしているのに気づいた。近くの温泉で帰る日を伸ばした。そして、疲れ切ってあの部屋に戻ると、蠅はいなくなっていた。彼のいない間に誰も日光を当てなかったから死んだのだろうと思った時、それは私においても誰かが世話をしているのだろうと思って、自尊心が傷ついた。
生きる意志が選ぶ場所からは出られない。
都会で生活していたが、体力をなくして、それができなくなった。あこがれだけは持っているが、今の場所から出られない。都会のような喧騒な光は華やかであるが、動き回らなくては生きていけないのである。彼と蠅はその渓間の宿のその部屋にしか生きられないのだ。彼はそれを無視して数日遠くへ行くが疲れて、生きる意志により戻っていった。そして、蠅がいなくなったことから、自分はこの箱で誰かから生かされていて、自分がこの箱を選んでいるわけではなく、この部屋を選ばされていると感じたのだ。
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